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自動車大手のセグメント別営業利益率 — どこで稼いでいるのか

トヨタ・ホンダ・日産・SUBARUの2026年3月期 有価証券報告書(EDINET提出XBRL)から、報告セグメント別の営業利益率を横断比較。金融が相対的に底堅い一方、ホンダ四輪の巨額赤字など自動車本業の悪化が当期の構図を大きく変えたことを、出典付きで可視化します。

自動車大手のセグメント別営業利益率 — どこで稼いでいるのか

自動車メーカーの決算を「売上いくら、営業利益いくら」と全社の数字で眺めるだけでは、その会社が実際にどの事業で稼いでいるのかは見えてこない。多くの自動車大手は、車そのものを作って売る事業のほかに、自動車ローンやリースを手がける金融事業を抱えており、両者は利益率の水準がまったく異なる。有価証券報告書の「セグメント情報」を開くと、こうした事業ごとの売上と利益が分けて開示されている。

本記事では、トヨタ自動車・本田技研工業(ホンダ)・日産自動車・SUBARUの4社について、直近通期である2026年3月期(2025年4月〜2026年3月)の報告セグメント別の売上高とセグメント利益(営業利益)を各社の有価証券報告書からデータエンジンで抽出し、セグメント別の営業利益率を計算して横断的に並べた。数字はEDINETに提出された各社の有価証券報告書のXBRL(機械可読データ)から取得しており、当サイトが要素を抽出・整形したものである。数値を見比べると、全社合計の数字では埋もれてしまう構図が浮かび上がる。とくに当期は、ホンダの四輪事業が巨額の営業赤字に転落するなど、自動車本業の収益が各社で軒並み悪化し、前期までとは景色が大きく変わった。

計算方法と比較の前提

本記事のセグメント営業利益率は、各社が有価証券報告書のセグメント情報注記で開示している数値をもとに、次の式で計算した。

セグメント営業利益率(%)= セグメント利益(営業利益)÷ セグメント外部顧客への売上収益 × 100

分母には、各社XBRLから取得できる「外部顧客への売上収益」を用いた。従来版は「セグメント間取引を含む計」を分母にしていたが、単一の真実源であるデータエンジンの仕様に合わせ、外部顧客売上ベースに統一している。主要セグメントでは、この違いによる利益率の差はおおむね0.1〜0.2ポイント程度にとどまる。各社の「その他」区分は内部取引の比率が高く利益率がぶれるため、率の比較対象からは外している。端数は小数第1位で四捨五入した。

横断比較には注意すべき前提がある。第一に、会計基準が各社で異なる。トヨタ・ホンダ・SUBARUはIFRS(国際財務報告基準)、日産は日本基準で開示している。第二に、セグメントの区分とセグメント利益の定義が完全には一致しない。トヨタは「自動車/金融/その他」、ホンダは「二輪/四輪/金融サービス/パワープロダクツ及びその他」、日産は「自動車/販売金融」、SUBARUは「自動車/航空宇宙/その他」と、事業の括り方そのものが違う。いずれも営業段階の利益を用いているが、費用の配賦方針は各社固有である。したがって以下の数値は「同じ物差しで正確に揃えた順位」ではなく、各社の開示に基づく利益構造の傾向として読むのが適切である。

もう一つ、トヨタについては但し書きがある。トヨタはセグメント別の売上高(外部顧客への営業収益)が有価証券報告書のXBRLに個別のデータ項目として収録されておらず、エンジンでは営業利益しか取得できない。そこで本記事では、トヨタのセグメント売上と利益率に限り、2026年3月期の決算短信のセグメント情報表から売上を補って算出している(出典は文末1)。他の3社がすべて有報XBRLの機械抽出値であるのに対し、トヨタの売上・利益率だけは短信からの補完値である点に留意されたい。

とくに金融事業は、製造業のセグメントと利益率を単純に並べて高い低いと評価できない。金利やリース料が売上、資金調達コストなどが費用という構造で、抱える資産規模も大きいため、利益率の意味合いが製造セグメントとは異なる。同じ「営業利益率」という言葉でも、その分母と分子が表す事業活動の中身が違う点は、数字を読む前に押さえておきたい。また、為替の変動や関税、原材料費、引当金や減損の計上といった要因は年度ごとに振れるため、ある一年の利益率がその事業の実力をそのまま表しているとは限らない。以下では前期との比較や一過性要因にも触れながら、数値の背景を合わせて読み解いていく。

トヨタ:自動車・金融とも黒字を維持、金融が自動車を上回る利益率

トヨタの2026年3月期セグメント情報によると、自動車セグメントは外部顧客への営業収益45兆2,019億円に対し営業利益2兆7,770億円、金融セグメントは外部顧客への営業収益4兆8,190億円に対し営業利益8,517億円だった1。これを利益率に直すと、自動車が6.1%、金融が17.7%となる。

トヨタ自動車 セグメント別 営業利益率(2026年3月期)
金融
17.7%
自動車
6.1%
出典: トヨタ自動車 2026年3月期 決算短信〔IFRS〕セグメント情報(売上は短信補完。文末出典[1])(2026年3月期(2025年4月〜2026年3月)) 営業利益率=セグメント利益÷外部顧客への営業収益。営業利益は有報XBRLと一致、売上は短信からの補完値。「その他」は参考のため非掲載。

事業規模では自動車セグメントが圧倒的で、全社営業利益3兆7,662億円1の大半を生んでいる。ただし利益率という効率の面では、金融が自動車を10ポイント以上上回る。決算短信によれば、自動車事業の営業利益は前期比29.5%の減益で、その要因は「諸経費の増加など」と説明されている1。一方の金融事業は前期比24.6%の増益で、「米国の販売金融子会社において、金利スワップ取引の評価益が増加したこと」などが寄与したとされる1。自動車本業の利益率は前期の約9%から6.1%へ下がったが、それでも4社の自動車系セグメントの中では黒字を確保しており、金融が高い利益率で全体を支える二本柱の構図は変わっていない。

ホンダ:稼ぎ頭は二輪、四輪は巨額の営業赤字に転落

ホンダのセグメントは事業別に4区分されている。2026年3月期の外部顧客への売上収益と営業利益は、二輪事業が4兆188億円・7,319億円、四輪事業が13兆8,634億円・営業損失1兆4,111億円、金融サービス事業が3兆5,295億円・2,755億円、パワープロダクツ事業及びその他が3,849億円・営業損失107億円だった。利益率に直すと、二輪18.2%、四輪マイナス10.2%、金融サービス7.8%、パワープロダクツ等マイナス2.8%となり、最も高いのは二輪である。

本田技研工業 セグメント別 営業利益率(2026年3月期)
二輪
18.2%
金融サービス
7.8%
パワープロダクツ等
-2.8%
四輪
-10.2%
出典: 本田技研工業 2026年3月期 有価証券報告書〔IFRS〕(EDINET XBRL: S100YDD9)(2026年3月期(2025年4月〜2026年3月)) 営業利益率=セグメント利益÷外部顧客への売上収益。四輪・パワープロダクツ等は営業損失。

当期のホンダで最も目を引くのは、四輪事業が1兆4,111億円という巨額の営業損失(利益率マイナス10.2%)を計上したことである。前期(2025年3月期)の四輪事業は営業利益プラス・利益率1.7%だったので、収益構造が一年で大きく反転したことになる。有価証券報告書によれば、四輪事業では当期に減損損失6,051億円が計上されており(前期は185億円)、これが四輪のセグメント損失に含まれている。減損以外の背景として、有報は「米国での化石燃料に対する規制の緩和やEV補助金の見直しなどにより、EV市場の拡大スピードが鈍化」したこと、「関税影響によるICE(内燃機関)/ハイブリッド車の収益悪化など、さまざまな要因が重なり、当社グループの四輪事業は極めて厳しい収益状況に陥った」と記している。

四輪が赤字化したことで、利益率18.2%を保つ二輪の存在感がいっそう際立つ。社名から受ける印象とは異なり、当期のホンダは利益の面で二輪が屋台骨を支える構図がより鮮明になった。金融サービスも7.8%の利益率を確保しており、製造の本業が振れるなかで金融が相対的に安定した収益源となっている点は、他社と共通する。

日産:自動車本業が営業赤字を継続、金融が全社を下支え

日産は日本基準で「自動車事業」と「販売金融事業」の2セグメントを開示している。2026年3月期の自動車事業は外部顧客への売上高10兆7,603億円に対し営業損失2,929億円(赤字)、販売金融事業は売上高1兆2,476億円に対し営業利益2,979億円だった。利益率は自動車事業がマイナス2.7%、販売金融事業がプラス23.9%と、明暗がはっきり分かれた。

日産自動車 セグメント別 営業利益率(2026年3月期)
販売金融
23.9%
自動車
-2.7%
出典: 日産自動車 2026年3月期 有価証券報告書〔日本基準〕(EDINET XBRL: S100YH2B)(2026年3月期(2025年4月〜2026年3月)) 営業利益率=セグメント利益÷外部顧客への売上高。自動車事業はセグメント損失。会計基準は日本基準。

日産の自動車事業は、前期(2025年3月期)に続いて当期もセグメント段階で営業赤字となった。有価証券報告書は、自動車事業の営業損失について「米国関税及び為替変動影響の多くをコスト削減活動により相殺したものの、前連結会計年度に比べ249億円の悪化となった」と説明している。一方、22.6%から23.9%へと高い利益率を保った販売金融事業は営業利益2,979億円(前期比4.3%増)を稼ぎ、自動車事業の赤字を補った。日産の当期の連結営業利益は580億円(売上高営業利益率0.5%)で、金融が全社の黒字を下支えする構図が続いている。

SUBARU:自動車本業が急減、航空宇宙は黒字転換

SUBARUのセグメントは「自動車」「航空宇宙」「その他」で、他の3社が持つ金融(販売金融)に相当する報告セグメントを持たない。2026年3月期の自動車セグメントは外部顧客への売上収益4兆6,383億円に対し営業利益321億円、航空宇宙は売上収益1,417億円に対し営業利益35億円だった。利益率は自動車が0.7%、航空宇宙が2.5%となる。

SUBARU セグメント別 営業利益率(2026年3月期)
航空宇宙
2.5%
自動車
0.7%
出典: 株式会社SUBARU 2026年3月期 有価証券報告書〔IFRS〕(EDINET XBRL: S100YFKZ)(2026年3月期(2025年4月〜2026年3月)) 営業利益率=セグメント利益÷外部顧客への売上収益。「その他」は参考のため非掲載。

SUBARUの自動車セグメント利益率は、前期の約9%から当期0.7%へと大きく落ち込んだ。有価証券報告書は、この急減の要因として「米国における追加関税の影響に加え、環境規制クレジットに関する損失を含む環境規制関連費用およびBEV関連費用の計上など」を挙げ、自動車のセグメント利益は前期比92.4%の減益だったと記している。一方、前期に赤字だった航空宇宙は、民間機の「中央翼」の納入数が増えたことなどで営業利益35億円・利益率2.5%の黒字に転じた。SUBARUは金融事業を持たないため、自動車本業の振れが全社業績にそのまま表れやすく、当期の関税・環境規制費用の影響が利益率に色濃く出た形である。

横断して見えてくる構図

4社のセグメントを横並びにすると、当期の共通点と相違点が見えてくる。下表は、各社の自動車(四輪)本業と金融セグメントの利益率を並べたものである。

自動車本業と金融セグメントの営業利益率(2026年3月期、横断)
企業 会計基準 自動車(四輪) (%) 金融 (%)
トヨタ自動車IFRS6.117.7
ホンダ(四輪)IFRS-10.27.8
日産自動車日本基準-2.723.9
SUBARUIFRS0.7
出典: 各社 2026年3月期 有価証券報告書のセグメント情報より算出(トヨタ売上のみ短信補完[1])(2026年3月期(2025年4月〜2026年3月)) 営業利益率=セグメント利益÷外部顧客への売上収益。会計基準・セグメント定義は各社で異なる(本文参照)。SUBARUは金融セグメントを持たない。

第一の気づきは、金融セグメントを持つ3社では、いずれも金融の利益率が自動車(四輪)本業を上回っていることである。トヨタは金融17.7%に対し自動車6.1%、ホンダは金融サービス7.8%に対し四輪マイナス10.2%、日産は販売金融23.9%に対し自動車はマイナス2.7%だった。金融事業が、製造の本業とは別の収益源として各社の利益を相対的に底堅く支えている構図が共通して読み取れる。ただし前述のとおり、金融事業は金利・リース収益を売上とし、大きな資産と調達コストを伴うビジネスモデルであるため、率の高さだけをもって製造セグメントより優れていると評価できるものではない。利益率の水準は、それぞれの事業構造の違いを反映した結果として捉えるのが妥当である。

第二の、そして当期最大の変化は、自動車本業の利益率が各社で軒並み悪化したことである。前期はトヨタ・SUBARUの自動車が約9%で並んでいたが、当期はトヨタ6.1%・SUBARU0.7%へ低下し、ホンダ四輪はマイナス10.2%の巨額赤字、日産自動車はマイナス2.7%の赤字継続となった。各社の開示をたどると、ホンダ四輪は減損6,051億円とEV市場鈍化・関税、SUBARU自動車は米国追加関税と環境規制・BEV関連費用、日産自動車は米国関税と為替、と要因の中身は異なるものの、米国の関税や電動化を巡る事業環境の変化が共通の逆風として挙げられている。単年度の利益率にはこうした個別事情が織り込まれているため、一時点の数値だけで優劣を断じるのではなく、要因まで踏み込んで読む必要がある。

第三に、事業ポートフォリオの違いそのものがセグメント分析から浮かび上がる。ホンダは四輪が赤字化した当期、利益率で見れば二輪(18.2%)が明確な稼ぎ頭であり、SUBARUは金融を持たず航空宇宙という独自の事業を抱える。同じ「自動車大手」でも、何で稼ぐ会社なのかは一様ではない。トヨタと日産が金融を厚く持つのに対し、SUBARUはそれを持たずに自動車本業の浮き沈みが全社に直結する。収益の作り方の設計思想そのものが異なることがうかがえる。全社の売上や営業利益という一つの数字だけを追っていると見落としてしまうこうした構図は、セグメント情報を分解して初めて像を結ぶ。

加えて、セグメント別の利益率は「どこが伸び、どこが沈んだか」という変化の方向を捉える手がかりにもなる。当期はホンダ四輪が前期のプラスから巨額赤字へ転落し、SUBARU自動車が約9%から0.7%へ急減する一方、SUBARUの航空宇宙は前期の赤字から黒字へ転じた。逆にホンダの二輪は高い利益率を保ち、トヨタ・日産の金融は二桁近い、あるいは二桁の利益率を維持している。こうした増減を複数年・複数社で並べて追うと、各社が今どの事業に支えられ、どの事業に課題を抱えているのかという力点の移り変わりが見えてくる。一時点の順位そのものより、率がどう動いているかにこそ、企業の現在地が表れることが多い。

なお、本記事で用いた各社のセグメント別売上・利益・利益率は、業種別セグメント利益率データのページで、総合電機・通信も含めて一覧できる。各社が異なる基準・区分で開示するセグメント情報を、定義差という前提を踏まえたうえで同じ指標に揃え、横断・経年で並べると、企業や産業の利益構造の違いが立体的に見えてくる。本記事は業種別 セグメント横断分析シリーズの一つで、総合電機・通信でも同じ手法の比較を公開している。

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Sources

  1. トヨタ自動車 2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結) - トヨタ自動車。セグメント情報注記より自動車・金融の外部顧客への営業収益・営業利益を取得(トヨタはセグメント別売上高が有報XBRLの個別ファクトに無いため、売上・利益率のみ短信で補完)。事業別セグメントの状況(減益・増益要因)も同短信より
  2. 本田技研工業 2026年3月期 有価証券報告書(EDINET提出XBRL、書類ID S100YDD9) - 本田技研工業(2026年6月18日提出)。事業の種類別セグメント情報より二輪・四輪・金融サービス・パワープロダクツ等の外部顧客への売上収益・営業利益、四輪事業の減損損失、経営環境の記述を取得
  3. 日産自動車 2026年3月期 有価証券報告書(EDINET提出XBRL、書類ID S100YH2B) - 日産自動車(2026年6月22日提出、日本基準)。セグメント情報より自動車事業・販売金融事業の外部顧客への売上高・セグメント利益、自動車事業の損失要因を取得
  4. 株式会社SUBARU 2026年3月期 有価証券報告書(EDINET提出XBRL、書類ID S100YFKZ) - 株式会社SUBARU(2026年6月22日提出)。セグメント情報より自動車・航空宇宙の外部顧客への売上収益・営業利益、自動車の減益要因・航空宇宙の黒字転換を取得
  5. 業種別セグメント利益率データ(2026年3月期・有価証券報告書ベース) - 本サイトが各社EDINET提出XBRLから抽出・整形した定番データページ(自動車・総合電機・通信の主要11社)