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セグメント情報の読み方 — 事業別の稼ぎ頭を見抜く

有価証券報告書のセグメント情報は、会社を事業の塊で見るための注記です。会計基準が定める報告セグメントの決め方(10%基準)、開示される利益・売上・資産・設備投資、そして読み解くときの勘所を、企業会計基準第17号をもとに整理します。

セグメント情報の読み方 — 事業別の稼ぎ頭を見抜く

決算書を見て「この会社は結局どの事業で稼いでいるのか」が知りたいとき、手がかりになるのが有価証券報告書の「セグメント情報」である。全社の売上や利益を1つの数字で見るだけでは、伸びている事業と足を引っ張っている事業が打ち消し合って見えなくなる。セグメント情報は、会社を事業や地域などの区分に分け、区分ごとの売上・利益・資産を示してくれる注記である。

この開示を定めているのが、企業会計基準委員会の企業会計基準第17号「セグメント情報等の開示に関する会計基準」である1。本記事では、この基準をもとに、セグメント情報に何が載っていて、どこを見ればよいのかを整理する。

セグメント情報は何のためにあるか

基準は開示の基本原則として、セグメント情報等の開示は「財務諸表利用者が、企業の過去の業績を理解し、将来のキャッシュ・フローの予測を適切に評価できるように、企業が行う様々な事業活動の内容及びこれを行う経営環境に関して適切な情報を提供するものでなければならない」と定めている1。つまり、全体をならした数字ではなく、事業ごとの中身を見せることで、会社の将来を考えやすくするための情報だといえる。

適用範囲は連結財務諸表または個別財務諸表で、連結で開示していれば個別での開示は要しないとされている1。私たちが普段目にする上場企業のセグメント情報は、多くが連結ベースのものである。

「マネジメント・アプローチ」という考え方

現在のセグメント情報の最大の特徴は「マネジメント・アプローチ」を採っている点である。これは「経営上の意思決定を行い、業績を評価するために、経営者が企業を事業の構成単位に分別した方法を基礎とする」考え方で、米国基準(SFAS第131号)やIFRS第8号でも採られている1

平たく言えば、セグメントの区分は会社が社内で実際に使っている事業の括りをそのまま外に見せる、ということである。基準はこの長所を「財務諸表利用者が経営者の視点で企業を見ることにより、経営者の行動を予測し、その予測を企業の将来キャッシュ・フローの評価に反映することが可能になる」と説明している1。経営陣が見ている景色に近い情報が得られるわけだ。

一方で短所もある。区分が各社の組織構造に依存するため、基準自身が「企業間の比較を困難にし、また、同一企業の年度間の比較が困難になるという短所」があると認めている1。会社が事業を再編すれば区分も変わる。他社や過去と単純に並べるときは、この点に注意が要る。

どの事業が「報告セグメント」になるのか

会社の事業すべてが個別に開示されるわけではない。基準はまず「事業セグメント」を、収益と費用が発生し、経営の最高意思決定機関が資源配分と業績評価のために定期的に検討し、分離された財務情報が得られる構成単位と定義する1。そのうえで、量的な基準を満たすものを「報告セグメント」として開示すると定めている1

量的基準は、ある事業セグメントが、全社の売上高合計の10%以上、利益または損失の絶対値が一定の合計額の10%以上、資産が全社合計の10%以上、のいずれかを満たすことである1。さらに、報告セグメントの外部顧客への売上高の合計が損益計算書の売上高の75%未満の場合は、75%以上になるまでセグメントを追加して開示しなければならない1。報告セグメントに入らない事業は「その他」の区分にまとめて示される1

この仕組みから、開示されているセグメントは「会社にとって一定以上の規模を持つ事業」だと読める。逆に「その他」が大きい会社は、小さな事業を多く抱えている可能性がある。

セグメント情報に載っている数字

報告セグメントごとに開示されるのは、まず利益(または損失)と資産である1。加えて、利益の算定に含まれている場合などには、外部顧客への売上高、セグメント間の内部売上高、減価償却費、のれんの償却額、受取利息・支払利息、持分法投資利益、特別損益、税金費用といった項目が示される1。設備投資の規模を示す「有形固定資産及び無形固定資産の増加額」も開示対象である1

これらを使うと、どの事業が利益を稼ぎ、どの事業が資産や設備投資を多く使っているかが見えてくる。たとえばセグメント利益を売上高で割ればおおまかな採算が、設備投資額を見れば会社がどの事業に資源を振り向けているかが読み取れると考えられる。

読むときの勘所

注意したいのが「セグメント利益と全社の利益は単純には一致しない」点である。各セグメントの利益を足し合わせた額と、損益計算書の利益計上額との間には差が出るため、基準は両者の「差異調整」の開示を求めている1。この調整には、全社共通費用やセグメント間取引の消去などが含まれる。セグメント利益の比較表だけを見て満足せず、調整額の欄も合わせて確認したい。

そもそもセグメントの利益は、経営者が意思決定に使っている利益であり、必ずしも営業利益や経常利益と同じものとは限らない4。基準も、差異調整の基準となる損益計算書の利益は営業利益・経常利益・税金等調整前当期純利益・当期純利益などのうち適当な科目とするとしている1。どの利益概念でセグメントを切っているかは会社ごとに確認する必要がある。

セグメント以外の「関連情報」

セグメント情報とは別に、基準は「関連情報」として、製品及びサービスに関する情報、地域に関する情報、主要な顧客に関する情報の開示を求めている1。地域別では国内・海外の外部顧客売上高や有形固定資産が、主要顧客については顧客の名称・売上高・関連する報告セグメント名が示される1。報告セグメントが1つしかない会社でも、この関連情報は開示しなければならないとされている1。特定の大口顧客への依存度や海外比率を確かめたいときに役立つ。

セグメント情報は、1社の中を見るだけでも事業の濃淡が分かるが、同じ業種の複数社を並べ、セグメント利益率や設備投資の推移を横断・経年で比較すると、業界の中での立ち位置がより立体的に見えてくる。当サイトでは実際に、総合電機・自動車・通信の主要各社についてセグメント別の営業利益率を算出・比較した業種別 セグメント横断分析を公開している。

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Sources

  1. 企業会計基準第17号「セグメント情報等の開示に関する会計基準」 - 企業会計基準委員会(最終改正 平成22年6月30日)
  2. セグメント情報等の開示に関する会計基準(基準ページ) - 企業会計基準委員会
  3. 企業会計基準第17号及び適用指針第20号の公表 - 企業会計基準委員会(2008年3月21日)
  4. セグメント情報等の開示に関する会計基準 第1回:セグメント開示制度の概要 - EY Japan